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Tiamat / T'apo Eagh / ScreenShots : http://www.flickr.com/photos/100497787@N06/

ファイナルファンタジー13と、ファイナルファンタジー13-2をあそんで

 この文章は、ファイナルファンタジー13と13-2をクリアしたときに勢いで書いたのですが、なんだか世間の評価が一本道とかバランスガーとか遊び倒してないのに適当なこと言ってるひとが多くて、すっごく楽しく遊んでいた私はムカついてパソコンに眠らせていたものをライトニングリターンズ発売に際してまた引っ張り出したものです。色々なところで設定や考察が明らかになったので一部はそうしたものを参考にしていますし、一部はそのまま残してあります。

ファイナルファンタジー13をあそんで
 第一作目のファイナルファンタジー13はコクーンと呼ばれる小さな星を舞台にした物語でした。コクーンはファルシと呼ばれる神のような存在に守られており、コクーンに暮らす人々は概ね穏やかに暮らしていたような描写が物語の前半でちらほらと描かれます。そこで穏やかに暮らしていたライトニングの妹、セラがある日、ルシと呼ばれる神の奴隷に突然選ばれます。コクーンの平和を乱す悪とされており、セラは社会の敵として追われ、そして使命を果たし、クリスタルになります。

 同じころ、セラの姉であるライトニング、セラの婚約者スノウなど何人かのひとたちがルシの烙印を押されます。彼らは社会から逃げ、シ骸やクリスタルになることを止めるための方法を探します。旅の途中でライトニングたちは、コクーンが管理された社会であることに気が付きます。ファルシたちの都合の良いかたちで生かされ、ルシにされ、神の戦いの道具として使われていく。コクーンやパルスの真の姿に気が付いたライトニングたちはルシとしての運命に抗うために聖府と戦います。その中で生まれた葛藤、怒り、そして感情の移り変わりを描いた物語がFF13であったと私は思います。
もっと分かりやすく言えば私にとってFF13は心の成長を描いた作品でした。

 管理された社会、敷かれたレール、抗うことのできない仕組みに立ち向かい、変えていく、話の本筋は王道中の王道だったと思います。ただ残念なことにややこしい用語と必要以上に盛られたキャッチコピーが、ストーリーを理解させづらくしていたように感じます。一応用語集とかゲーム内にあるんですけど、いちいち調べないというか、そういうのをすんなり受け入れさせるのもゲームデザインだと思うのですけどね。

 ゲームの成長システムとしてクリスタリウムというものがありますが、これがキャラの心なんじゃないかなと思っています。各キャラには得意なロールがあり、戦闘で得たポイントで成長させていくシステムはキャラクターの心の成長を連想しました。

 ライトニングたちはコクーン、後半はパルスと呼ばれる外の世界の旅を通じて精神的な成長を遂げます。例えばライトニングはセラを守るという信念の元、あらゆる対象をなぎ倒して進む孤高の存在でしたが段々と打ち解け、殴り飛ばしたスノウを頼りにして、ホープに穏やかな表情を見せていきます。例えばホープは母親が死ぬ切っ掛けになったスノウの行動に怒り、憎み、感情を爆発させて襲い掛かります。スノウもその思いに真っ向から立ち向かい、そして理解し合います。エストハイム邸手前でのイベントからエストハイム邸で見ることのできる美しい夕日は気持ちに区切りをつけた描写にも感じることができて印象的でした。ホープは1作目では14歳だったこともあってか、内面的な成長を見せるイベントが多かったように感じます。11章でのヴァニラとのニヤニヤイベントやライトニングとの微笑ましい一面など、多感だった少年が少しずつ青年へと成長していく姿に一喜一憂しました。ホープはとても感情移入しやすいキャラだったと思います。その他のキャラもそれぞれに苦しい気持ちを内側に抱えており、前半部分は重苦しい雰囲気が続いた作品でした。

 重い雰囲気が一気に解放されるのが10章から11章にかけてのコクーン脱出のイベントで、衝突と離反を繰り返していた主人公たちが結束しあい、そして新たな地へ旅立つこのムービーシーンが私は大好きです。パルスと呼ばれる外の世界は、それまで言い伝えられていたような荒廃した世界ではなく、自然にあふれ、生活する人もいる地でした。旅を続けるライトニング一行は、パルスの歴史を紐解く過程でパルスとコクーンの関係、そしてコクーンの代表者バルトアンデルスの陰謀に気づき始めます。バルトアンデルスはコクーンを統制するファルシ=エデンとエデンのオーファンを破壊し、コクーンを破滅させることでかつてこの世界にいた神々を呼び戻そうとしていました。それが彼の使命でもあったのです。このバルトアンデルスってやつが厄介で、何度も何度もライトニングの前に立ちはだかります。その都度、ライトニングたちと言葉を交わすのですが、お互いの主張は全く相手に通じません。ライトニングたちは力づくでバルトアンデルスを退けて旅を続ける訳ですが、それすらも彼の思惑通りという設定。このあたりも抗えない運命としての描写の一部なのかな、と思います。

 最終的にライトニングはバルトアンデルスを討ち、コクーンを崩壊させます。世界は滅亡し、セラを助けることができなかったライトニングは後悔しながら世界を変えることを諦めようとします。そのとき、パルスのルシであったファングとヴァニラがラグナロクとなり、その身をクリスタルに変えながらコクーンを支え、礎となるのです。破壊の使者であったはずのラグナロクが身を犠牲にして世界を守る。そしてコクーンの住民たちは呪いの地と言われていたパルスへ降り立つ。彼らの行動が世界の運命を変えた瞬間でもありました。そしてファルシの呪いから解き放たれたセラがライトニングへ駆け寄り、ファイナルファンタジー13のお話は終わりを迎えます。パッケージのロゴにもなっている象徴的なシーンですが、ファングとヴァニラが世界を支える演出は、FF13がお話を通じて伝えたかったことなのではないかと思います。個々の想いや願いが人を支える柱になり、それは新しい世界へ踏み出す第一歩にもなる。最後のシーンでみんながどこか晴れやかな顔であったのも、二人を信じていたからこそなのだと思います。

ファイナルファンタジー13-2を遊んで

 続いて、ファイナルファンタジー13-2へ舞台は移ります。前作のお話のあと、ライトニングは突然姿を消します。誰もが「ライトニングは死んだ」と諦めますが、ライトニングの妹、セラだけは彼女を諦めずに信じ続けます。3年の月日が流れ、穏やかに暮らす人々の頭上に突然時空が歪み、隕石が降り注ぎます。間一髪のところで謎の青年ノエルに助けられるセラは、彼と共に時空の歪みを正す旅に出ます。ライトニングと再び会える日を信じて。

 前作ではライトニングに守られるだけの存在だったセラが、姉を探すためにノエルと共に旅に出るのが13-2でした。序盤でのセラは頼りなさげで主張もはっきりしていなくて不安げでした。そこをがっちりサポートしてくれるのが成長して青年になったホープと一緒に旅をするノエル、そしてお茶目なモーグリの2人と1匹でした。私にとってこの作品でのホープとノエルは非常に重要な位置を占めていました。特にノエルの爽やかな性格は、あてのない旅を続ける二人のお話の中でひときわ輝いていて、物語を重苦しくさせない素晴らしいキャラクターだったと思います。そんな二人を陰でしっかりと支えてくれるのがホープでした。あまり抑揚が無い喋りでしたが頼れる兄のような存在だったホープと、辛い時も前を向いて諦めずに手を引いてくれるノエルの二人と共に、セラもまた成長したのだと思います。また、前作のひたすら走り続けるライトニングと違って13-2はコミカルな演出やほっと一息つける場所もあり、FF13のお話をなぞりながらまた新しい物語を緩やかに紡いでいく、遊びやすい作品だったと思います。

 13-2は時空を旅する物語ということで、前作よりはるか昔、はるか未来の世界も舞台になります。そこで少しずつ明らかになるコクーンとパルス、ファルシの物語。そして大いなる混沌カイアス・バラッドと時詠みの巫女と呼ばれるユールの存在。最初は世界を破壊するために歴史の改編を繰り返してきたのかと思いましたが、本当は時詠みの巫女、ユールのための行為だということが明らかになると、カイアスもまた苦しんでいることが分かりました。どれだけ歴史を変えても訪れるユールの死と世界の終り。無数の世界を改編した末にカイアスが選んだのは、世界を混沌で飲みこむことでした。ライトニングはその目論見を阻止しようとヴァルハラに運ばれ、神の使いとしてカイアスと戦い、そして敗れたのでした。セラにその事実が伝えられますが、彼女は姉の死を信じずに世界の歪みを正す旅を続けます。「お姉ちゃんなら、きっとこうするから」と前を向いて。

 無数の歴史のゆがみが正され、少しずつ正しい歴史へ戻り始める世界と、旅の途中で幾度となくライトニングの夢を見るセラ、時詠みの巫女の真実に辿り着く中で傷ついて沈んでいくノエル。物語の終盤でセラとノエルの立場が逆転していきます。人は、ずっと強いわけではありません。落ち込んだり、泣いたりもする。それでも立ち上がるのは、頑張ることができるのは「信じているから」、ノエルに言われた言葉をそのままノエルに返すセラは、旅を重ねてとても強くなっていました。そんなセラの呼びかけに、笑顔で応えるノエルもまた、旅を通じて成長したのだと思います。

 旅を通じて明らかになって行く世界の真実と共にセラが時詠みの巫女であることが分かりました。夢でライトニングを視たのもすべて時詠みの巫女としての能力でした。時詠みの巫女の力は、使い続けると死んでしまう。このまま時空の旅を続ければ、セラの命もやがて尽きてしまいます。その中でとうとうカイアスを追い詰めたノエルとセラ。ギリギリのところでカイアスを殺すことを踏みとどまったノエルでしたが、カイアスがノエルの剣を自分に刺し、絶命します。結果的に混沌の神であるカイアスを殺してしまったノエルは、顔を歪めながらも正しい世界へと戻りました。しかし、世界の歪みを正したことでまた新しい未来が生まれ、時詠みの力が発動し、セラは死んでしまいます。さらに、カイアスの心臓は女神エトロの心臓であったためにヴァルハラは崩壊し、世界が混沌に満ちていくのでした。

 この辺りはゲームを通じてどうなるのか全く分からず、煮えきらない状態で終わったのでとても残念でした。その後、ライトニングリターンズの発表があるまでやきもきさせられていたのでゲームとしての決着がつかなかった13-2はこの当時は本当に惜しい作品でした。それでもこの作品を馬鹿にできないのはノエルがいたからです。ノエルには幾度となく救われました。「男性に嫌われないように意識してつくった」ということでしたが、私にとってそれはバッチリだったようで、歴代の男性キャラクターの中でもかなり好きなキャラクターになりました。ノエルの強さのおかげで、最後まで楽しく遊べたのがファイナルファンタジー13-2でした。

続きはライトニングリターンズを遊び終えてからまた、書こうと思います。