今日も歌があるから

Tiamat / T'apo Eagh / ScreenShots : http://www.flickr.com/photos/100497787@N06/

劇場版『アイドルマスター THE MOVIE 輝きの向こう側へ』を見てきました

 記事タイトルはTwitterだとSTERさんになるとが飛ぶのでやむなくカタカナにしました。

 劇場版『IDOLM@STER THE MOVIE 輝きの向こう側へ』を見てきました。月曜日早起きして気になってそのままブルクで予約して朝イチの回へ。こういうときのネット予約は便利。それと、ブルクができてからアニメの劇場版もコンスタントに上映してくれるので助かってます。平日で朝イチの回なのにお客さんの入りはまあまあ。ほどなくして始まりました。

 ここからはネタバレ全開で書くので畳みます。というか、ここからは自己満足のかたまりです!


 まずは感想から言わせてもらうと、すごく良かった。ほんともう、めちゃんこよかった。何度も泣いてしまったし何度も笑った。スタッフのアイマスへの惜しみない愛が、私みたいな浅いファンにもしっかりと届いた。本当にありがとうございます。

 劇場版の舞台は原作の少しあとという設定、のはず。メンバーそれぞれが有名になり、忙しい毎日を送る日々。中でも美希はハリウッドデビュー、千早はニューヨークでレコーディングだなんて、びっくりするぐらいの人気っぷり。そんな中で決定した765プロ初のアリーナライブ。嬉しさと同時にプレッシャーものしかかり、緊張感のある表情を見せるメンバーたち。そして、今回のアリーナライブに向けて決まった事がふたつ。

ひとつはアイドル候補生をバックダンサーとして迎えること、
もうひとつはアリーナライブのリーダーが、春香だということ。

 はい、まずここで泣いてしまいましたね。私がアイマス1で一番好きなのは春香のシナリオでした。等身大の女の子がアイドルになってみんなを幸せにしたい、実にシンプルな理由でアイドルになった春香が、なんとリーダーに抜擢された。嬉しくて嬉しくて仕方なかった。きっと少し頼りのない春香だけど、真っ直ぐな気持ちでみんなを引っ張ってくれるんだろうなと、残りの時間が抜群に楽しみになった。それと、社長が順二郎さんだったのもじわっときたなあ。お亡くなりになったので仕方ないんだけども、やっぱり寂しいね。
 話を戻して、アイドル候補生として迎えられた子たちは全部で7人。えっ、7人もいたのか。そうか。グリーのアイマスのゲームから来たみたい。みんな中々クセのある子たちで、特に志保ちゃんというキャラはプライドが高くてこの手のお話には必須の仲良しムードブチ壊しキャラ。今の時代はスマートフォンあるからね、一人でも暇つぶしできちゃうもんね。てかそれLINE?それともう一人、可奈ちゃんという子。この子は春香のファンで、春香に憧れてアイドルを目指すようになった女の子。憧れの気持ちを糧にして、日々頑張っていたところ、今回のアイドル候補生に抜擢。7人の中では一番ファンの気持ちに近い女の子だったと思う。

 765プロの面々とアリーナに向けての練習の一環として合宿を行う事が決まり、海に近い、とある旅館を貸し切る事になる。このときの舞台が夏で、入道雲や蝉の鳴き声や夕焼けがパパパッと映し出されて、夏が待ち遠しくなった。早く夏がくるといいなあ。
 ここでの合宿という設定は、見てる側としてもすごく安心できる場面だった。普段はここで生活し、お仕事のときだけ合宿所からいなくなる、という描写をすることで、視聴者の意識は合宿所に固定されるし、登場人物たちも意識が散らばらない。後に東京に戻ってのレッスンでスタジオや事務所や自宅がそれぞれ映し出されるけれど、ここはここで非常に素敵な描写だったと思う。また後ほど。何はともあれ「夏に海の近くで合宿」という組み合わせは部活っぽいので好き。生活のスタイルを固定させて長い時間共同で生活することで結束を強めるという趣旨も生まれるのでお話を分かりやすくするためには必須だったと思う。大きい部屋でごはん食べたり寝転がってるシーンは昔を思い出して鼻の奥がツンとした。

 合宿では当然レッスンを行う訳だけど、これがとてもハードで、候補生たちは毎日ヘトヘトに疲れてしまう。先輩たちは多少の疲れを見せながらも元気そうで、少しずつ彼女たちにプレッシャーを与えていく。気遣ってサポートをする765プロの面々の成長っぷりに頬が緩む。伊織が後輩に飲み物渡してるんだよ。オーマイガーだよ。レッスンだけでは空気が張りつめていくので、時折息抜きも挟み込まれる。水遊びだったり海水浴だったり。印象的だったのは春香と千早の早朝のシーンだった。少ない言葉でお互いの考えを伝えて、確かめあって、少しだけ励まし合う。この二人は本当に良いライバルで、パートナーだなあ。

 ああ、それと雪歩だったかな、合宿途中にお仕事へ向かうときに「ずっと合宿だったらいいのに・・・」って漏らすんだけど、そのときの律っちゃんのやさしい顔が良かった。この後の話を知っているから、というのもあるんだろうけれど、楽しいことばかりじゃあ、いけないんだよね。

 キツいレッスンの中で候補生たちの間に少しずつ差が出始めてしまう。ひとの上達には差があるのは仕方が無いことだけれど、今回はアリーナライブのバックダンサー。失敗も許されないし、みんなが同じだけの水準にならなくちゃいけない。上達している組の志保ちゃんが、ここで少し亀裂を作る。ただ、ここでは先輩たちのおかげで大事にはならない。春香のファンである可奈ちゃんは、ダンスの上達に遅れが出てきていて、悩み出す。合宿所の裏手で一人座っているところに、運良く春香と遭遇し、悩みを打ち明ける。春香は天真爛漫な性格だから必死に励まして、可奈ちゃんもなんとか持ち直してくれる。そして意を決して春香に伝える。自分が春香の大ファンであることを。春香に憧れてアイドルを目指していることを。
 はい、ここでまた泣きましたね。いいですよね、自分のファンが自分と同じ道を目指してくれていて、それを本人の言葉で伝えられるって。アイドルとして最高のファンレターじゃないですか。レターではないけれど。春香が照れながらもサインを書いて「がんばろうね」って伝えるところでハラハラと泣いてしまいました。ゲームではファンレターでしかファンの言葉を知る事ができなかったから、こうやって面と向かって伝えてもらえるシーンがあって本当によかった。

 合宿最終日、通しのダンスに赤羽根Pの粋な計らい。律っちゃんを含めた全員でのごまえー。畜生、立て続けに泣かせんな!そりゃあ町のひとどころか許される事なら観客席からも拍手をお届けしたかったよ。最終日の夜、赤羽根Pからみんなに「たいせつなお知らせ」が伝えられる。それは、海外へのプロデューサー業の武者修行に旅立つこと。期間は短くはなく長くもなさそうななんとも曖昧な期間。けど、今までほぼ毎日一緒に切磋琢磨していたプロデューサーが居なくなってしまう事実に頭が追いつかないメンバー、そしてパチッと爆ぜるたき火、まくしたてるメンバー。ここはBGMが一切無くて話が進み、たき火の『パチッ』という音とともに場面が切り替わるのですが、こうした間の持ち方は緊迫感が出ていいですね。なんとなく話の流れが分かっている私たちもドキッとさせられる。思わず固唾をのんで見守ってしまった。

 赤羽根Pの武者修行の発表にもなんとか踏ん切りをつけて合宿が終わり、舞台は再び東京へ。相変わらずの厳しいレッスンとステージ演出への喧々諤々としたやり取り。そして街を彩りだすアリーナライブの宣伝。表参道っぽいところに掲げられた巨大な広告は、アニメだって分かってるけど、何とも言えない気持ちにさせてくれた。いよいよ始まるんだな、と。そんな中、候補生たちのお披露目も兼ねたミニライブで可奈ちゃんが本番中に転倒してしまい、週刊誌にゴシップが載ってしまう。もう慣れっこなので全く気にしていない765プロの面々とは対照的に、初めてのゴシップに戸惑いを隠せない候補生たち。意識の違いも重なって遂に気持ちが爆発してしまい、可奈ちゃんに辛く当たってしまう志保ちゃん。ギクシャクし始める候補生たち、変化に気づいてあげられずにいつものテンションで接する765プロたち。このあたりは舞台が東京に戻ってきたことでそれぞれの生活と仕事と事務所のシーンがぶつ切りで流れる。連続する短いカットが、それぞれの気持ちのズレを表現していて、見ている側を不安にさせます。加えて天気がずっと良くならない。みんな小さい不満を抱いて、それがわだかまりになって上手くいかない。見ているこっちもいやーな気分になってしまう印象的な場面。
 そして決定的な事件が起きてしまう。可奈ちゃんがレッスンにこなくなってしまった。連絡にも応えてくれない。原因はミニライブでの転倒と、その後の感情的なやり取りであったことは間違いないけれど、候補生たちは中々それを言いだせない。赤羽根Pがせめてもの手助けとして訓練生を765プロに向かい入れてのレッスンが始まるけれど、それぞれの意識にズレがあって、思うようにはいかない。それでもリーダーとしてのつとめを果たそうとする春香だけれど、それもまたすれ違いを生んでしまう。このあたりは見ていてやきもきして仕方なかった。リーダーの言葉を大切にするあまり、らしくないそぶりを見せる春香が痛々しくて、それにイラついてしまう志保ちゃんの気持ちもよく分かった。結局「どうしたいのか」が分からなくて「みんなでがんばろう」「元気をだそう」というぼんやりとした気持ちしか聞く事ができなくて、志保ちゃんがイライラする気持ちがよく分かって、悶々としながらスクリーンを眺めてた。赤羽根Pと律っちゃんもおんなじ気持ちだったことだろう。

 そんな重くてしんどい空気を変えようと春香に手助けしてくれるのが、765プロのみんなだった。彼女たちは決して「こうしろ」とは言わないけれど、春香に答えを伝えてくれた。伊織とか美希みたいに、普段は少し遠い視点で見つめてる子たちが、春香のような真っ直ぐな子を助けてくれるこのくだりはとても良かった。そりゃそうなんだけど、みんな仲良しなんだよね。最後に、ざんざんと降る雨の中で千早が春香に問いかける。「春香はどうしたいの?」って。はいはい、もうあんたたちサイコー。春香と千早はサイコー。思わずため息が漏れちゃった。優しいなあ千早は。

 ざんざん降る雨の中で春香は可奈ちゃんと電話で言葉を交わす。まだ答えが見つけ出せていない春香の渇いた言葉は可奈ちゃんに全く届かない。届いていたのかもしれないけれど、伝わらない。結局一方的に電話を切られてしまうのだけれど、電話で何も解決しないこのシーンが好き。私はメールと電話は相手の感情が分かりにくいからとても苦手。今の時代はメールや電話で解決させようとすることも多いし、実際便利だ。でも、やっぱり会って言葉を交わしてやり取りできることのほうがずっと多いよね。
 という訳で翌日、雨が上がって、春香は決めた。可奈ちゃんに会って話すって。レッスンよりもステージの演出の話よりも大事なことだって決めた。志保ちゃんがどんだけ食って掛かっても凛とした表情でひるまない春香を見て嬉しくなった。春香がどうしたいか、答えがやっと出た。「しゃーねーなー」と言いながらも嬉しそうな765プロの面々が映し出されて思わずニヤニヤしてしまう。そしてみんなで可奈ちゃんの自宅や周辺に行く。上がっていた雨がまた降り始める。今回、天気を感情表現の一部として使っていると思うんだけど、一度止んで、また降り出すっていうのが印象的だった。そう、まだ問題は解決してない。可奈ちゃんを見つけて、追いかけて、面と向かって言葉を伝える春香。届いているはずなのに煮え切らない可奈ちゃん。レインコートのフードをとったら、まさかの太ってた!わはは、すげーや。いやそりゃあアイドルにとって体型の維持は必要不可欠だけど「二次元は浮気しないしうんこしないしおならしないし太らないし老けない」みたいな幻想を思いっきりぶっ壊してくれて最高だった。そりゃあお菓子食べまくったら太るよね!

 色々な感情が混ぜこぜになってどうしたらいいか分からなくなってしまった可奈ちゃんを連れて春香がある場所に向かう。アリーナだ。雨は少しずつ弱くなっているけど、まだ降り続けている。そんな中でみんながステージに立つ。デカい。遠い。高い。生半可な気持ちじゃあとても立てない大舞台。訓練生は圧倒されてしまう。可奈ちゃんがこんなところに本当に立っていいのかと映した視線の先で震える春香に気づく。憧れの春香ちゃんでも怖いんだ。グッと拳に力を込めて震えを押さえ込んだ春香がステージの先頭に立って、アリーナライブを成功させたいという思いをぽつぽつと語り始める。このあたりずっと泣いてたんで台詞あんま覚えてないんだけど、アイドルとしての覚悟とかそういうことではなくて、お客さんを楽しませたいという純粋な気持ちを伝える春香はとてもかっこよかった。春香の言葉が今度こそ伝わったみたいで、可奈ちゃんも涙を流しながら、応えてくれていた。みんながアリーナを出たときには雨は止んでいて、帰り道の土手で最高のスポットライトが13人とあと1人を照らしてた。

 さあ、いよいよライブ当日。バッチリ衣装に着替えたメンバー、ワンポイントで頭にお花を乗せたかわいくもかっこいい衣装。で、当然のように律ちゃんにも花を渡す。13人で765プロなんだ!中々見れない舞台の裏側の感じも嬉しい。アイドルと候補生、19人のかけ声。幕の裏側に一人ずつのシルエットが映し出されて、ライブが始まった。けど、1曲だけで残念だったなあ。せめて2曲、欲を言えば間にメンバーの一言があったらもっとよかったのに。

 夢のようなライブ(多分)は終わり、舞台は空港。赤羽根Pも一歩踏み出す。見送りにきてたアイドルたちに、夏の日のような哀しそうな表情は無くて、みんなすっきりした顔だった。きっと自分たちの経験を通して彼の決断を受け入れることができたんだと思う。元気に見送って、スタッフロール。ライブ直前と、その後の姿が映し出されて、最後に、赤羽根Pが帰ってきた!もう最後でもっかい泣いた!くそー!やったー!

 というわけで本当に最高の2時間でした。この感想では触れなかったけれど、もうひとつ、音楽がとても素敵でした。MONACAの高田龍一さんということで、ストリングスの入った曲は名曲ぞろいでした。サントラ買います。

 アイマスは自分にとってそこまで深い作品ではなかったのだけれど、底力を見せられたというか、初めてアイマスに出会ってゲームを遊んでベストエンディングを見れた時のような気持ちになれました。こんなにも素敵な作品を作ってくれて、本当に、本当にありがとうございました。