今日も歌があるから

Tiamat / T'apo Eagh / ScreenShots : http://www.flickr.com/photos/100497787@N06/

『たまこラブストーリー』を観てきました

先週公開された「たまこラブストーリー」を観てきました。
ネタバレなしの感想です。

 季節は春、高校3年生に進級したたたまこは相変わらずおもちのことばかり考えていましたが、進路のことなど、将来のことを少しずつ意識し始めたみどりやかんなたち。ふわふわしたままのたまことは対照的に、もち蔵はある決意を固めます。昨年のアニメ本編ではたまこが大好きなもち蔵がビビって何もできず、加えてたまこはおもちのことばかり考えていて能天気で、全くと言っていいほど何も進展がありませんでした。そんなもち蔵とたまこに起きた物語を描いたのが今回の劇場版でした。

 高校3年生という1年間は、人生にとって1つの転機です。これまでなんとなく周りに合わせて通っていた高校生活が終わり、進学するのか就職するのか、どんな学校にどんな仕事に、専門学校なのかはたまた大学か、少しずつ自分の道を作っていく、その最初の一歩は高校3年生なんじゃないかな、と思います。作品の中でも主要なキャラたちがいろいろな思いを胸に将来を考えます。でも、どの子も将来について確たる自信があるわけではなく、どこかとらえどころのない不安定な未来の話に花を咲かせます。私は色々悩んで話した末に大学に進学しましたが、当時はまだよくわからなくて、とりあえず右行くか左行くかだけ決めたのを覚えています。夢もあったけれど、結局今はその夢とは違うことをしていたりします。そんな中、もち蔵は決意を固めます。どんな決意かは本編をご確認いただきたいのですが、これまであんまりフォーカスの当たらなかったもち蔵が将来とたまこのことを、どう考えているのかを垣間見ることができました。
 
 また、タイトルにもあるとおり、恋についてもエピソードがあります。もちろん、たまこともち蔵の仲について。これまでたまこのド天然ともち蔵のドチキンが合わさり最強のやきもき恋模様が描かれていましたが、ようやく話が進みました。もち蔵とたまこ両方の視点と感情が交互に描かれるようになっていて、男性も女性もそれぞれの立場に自分を重ねて見れたのではないでしょうか。『好きな子のこと考えてるときってこんなだったよなあ』なんていう懐かしさや、もち蔵の背中を両手で押してやりたい気持ちが混ぜこぜになってしまい、ボロボロ泣きながらもち蔵を応援していました。二人の恋模様がどうなるのかは、ぜひ劇場で見てあげてください。
 
 今回の劇場版の話をするうえで書きたかったことがもう二つ。一つは大人たちのやさしさです。たまこともち蔵が暮らすうさぎ山商店街には個性的な大人が沢山住んでいます。作中でも端々に出てくるのですが、進路や恋でぐらぐら揺れる二人を変わらないやりとりで支えてくれています。彼らはきっと細かい話を知らないでしょうし、知っていても顔に出していないのでしょうが、変わらない商店街の存在がとても心強くてあたたかくて、安心させてくれるのでした。そんな中で、たまこともち蔵の家族たちは「何となく察して」いるのですが、直接触れることはなくそっと優しく、少し荒々しく、肩を貸してくれる姿がえがかれます。これはもう少し大人になってから分かることでしょうが自分にも似た経験があって、その時のことを思い出してやっぱり泣いてしまいました。豆大父ちゃん、かっこよかったです。
 
 それで最後にあとひとつ。あとひとつはね、みどりちゃんがかわいい!11!!!!たまこの幼馴染のみどりちゃんがかわいい!すごい!かわいい!とても!かわいい!Kawaii
 以前からもち蔵がたまこに近づくのがなんとなく気に食わなかったみどりちゃんは、アニメでも何度かもち蔵に意地悪をしてしまいます。それはもち蔵が嫌いというよりは、たまこが取られることが嫌だという嫉妬に近い感情だと思いますが、そんな子供っぽい感情を否定しつつもついやってしまう自己嫌悪に陥るみどりちゃんがどうしょうもなくかわいい。まんがタイムきらら発だったらもち蔵よりみどりちゃん応援してた。そんなみどりちゃんは作品の中で何度かキーパーソンになります。かんなちゃんも史織ちゃんもそれぞれかわいかったのですが、冷静に振る舞ってるようでいて冷静さを欠いてしまったり、ついもち蔵に意地悪をしてしまったり、他のキャラより一際人間味にあふれるみどりちゃんがダントツかわいかったのでした。

 吸い込んだ空気が少し冷たくて鼻の奥をツンとさせるような、春風まとう青春ラブストーリー。今の季節にふさわしい素晴らしい作品なのでした。今週、気持ちを整理させて改めてもう一度見てこようと思います。