今日も歌があるから

Tiamat / T'apo Eagh / ScreenShots : http://www.flickr.com/photos/100497787@N06/

モンスターボールを投げた日

ポケットモンスター赤・緑が発売された1996年、私は中学生だった。
一番最初に選んだポケモンフシギダネ

 我が家はゲームに対する約束事が厳しくて、ゲームは2日に1度、30分だけ遊ぶことができた。ゲーム機は普段は親の部屋の箪笥の中で管理されていたので、こっそり遊ぶこともできなかった。それを1週間ぶん溜めて週末に1時間30分、ポケモンの世界を堪能するのが当時の一番の贅沢だった。実はお金持ちの友だちに余ってた本体を1個借りてこっそりやってたりしたんだけど早々にバレてゲーム1か月禁止の刑を科せられたりもした。

 友達との口コミだけが唯一の情報源だった時代、噂に踊らされまくってミュウを探しにマップの果てまで歩いて行ったり、わざマシンをバグらせたり、ケーブル引っこ抜いて増殖させたり、セレクトボタン13回押してバグらせてセーブデータをぶっ壊したり、ケツバン出したり、とにかく沢山遊んだ。
  金・銀発売が決まった時は大層喜んだのだけど、延期に延期が重なって発売したときにはポケモンに熱中する年齢じゃなくなってしまい、それからはポケモンスマブラで出てくるお邪魔キャラ、という感じだった。当時の151匹から先はあんまり知らない。

 そしてそして時は経って2015年、Pokemon GOの予告映像をYouTubeで見た。当時夢中でやり込んだときの記憶がブワッと戻ってきて興奮した。普段、作ったご飯の写真くらいしか上げないFacebookにも思わず興奮して書き込んだ。特に反応は無かったけど、なんか皆に知ってほしかった。おいお前ら、むかし夢見た世界が現実になるぞって。

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  それから更に少し時間が経って、2016年7月22日にとうとう日本でもサービスが始まった。速攻でインストールして最初に選んだのはもちろんフシギダネ。目がくりっくりのサイコーにかわいいやつ。漫画やゲーム機に囲まれた自分の部屋に出てくるフシギダネモンスターボールで捕まえる、何回か失敗して捕まえた。「やったー!」って出た。あれ、GOTCHA!じゃないのか、とか思ったけど、とにかく捕まえたんだよ。Aボタンじゃなくて、iPhoneをスライドしてボールを投げたら当たって、捕まえた。ヤバい、本当に捕まえたぞ。自分の手で、投げたボールで。楽しい!
 
 そのあとは出かける用事があったのでいつもは電車かバスで行く距離を歩いて向かった。スポットを開けながら歩いてると道中でイーブイに出会った。イーブイこんな普通にいていいの?つーかめっちゃかわいいんでゼッテー捕まえる。モンスターボール5個つかって捕まえた。ラッタとズバットも出てきた。当時はカッコ悪いからシカトしてたのに、妙に愛らしく見える。バッシバシ捕まえた。ポッポ先生も出てきた。用事を待ってる途中、少し先にでっかいハサミのシルエットが出てきた。えーとなんだっけこいつ、って一瞬考えて、そうだカイロス!20年ポケモン触ってないのに名前がすらすら出てくる。最初の151匹はしっかり脳味噌に刻まれてた。カイロスは結局見つけられなかった。くそう。

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正統派アイドル
 
 最初の用事を終えた帰り道、少し遠回りして次の場所に向かうことにした。関内駅からハマスタへ向かって大通公園を通って山下公園へ。このときはまだ遊んでいるひとは殆どいなかったのだけど、ベイスターズ通りにはルアーが立っていて、オニスズメを捕まえた。山下公園に行くと中高生くらいの若者が「コイキングゲットだぜ!」ってはしゃいでた。わかる、わかるよその気持ち。すかさずiPhoneを取り出してピチピチはねるコイキングを捕まえた。相変わらず間抜けな顔をしてるなあ、ギャラドスになるまで100匹も捕まえるのかい、なんて思いながらもやっぱり嬉しい。山下公園から元町へ抜けて、港が見える丘公園に向かった。ここではビードルキャタピーがめっちゃ出てきた。虫だもんな、お前ら。てっぺんまで登ると今度はニョロモのシルエット!俄然テンションが上がる。まだARを切ってなかったのでiPhoneを掲げる不審者が何も知らない観光客をとらえる。お騒がせしました。
 そのあと一回家に帰ったけど物足りなくて、ランニング用の装備に着替えて夕方までもう1回ポケモン探しに出かけた。教会の近くでクサイハナを捕まえた。
 
 土曜日早朝、ランニングがてら山下公園に行ったらまだ朝の8時なのにポケモントレーナーで溢れてた。すごい。あっちこっちでスマートフォンを構えてる。少し年配の夫婦が「いたいた!」とか言ってる。サングラスをかけて犬を散歩させてるお兄さんも人差し指スイーッてしてる。とか思ってたら自分のiPhoneが振動する、お、コダック、慎重に行くぞ!なんて。結局いつも5km走って帰ってたところ、10km走った。正確にはポケモンを探してうろうろしてた。昨日も朝からポケモン探しに歩き回った。友人と一緒に桜木町に集合してランドマーク、臨港パークワールドポーターズ、赤レンガ倉庫、山下公園、中華街、ハマスタを歩いて、15時に解散。すごい健康的。ハマスタパウワウ見つけたときはちょっと大きい声出しちゃったよね。

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ニャースがめちゃくちゃかわいい
 
 今朝になると、もう早々に「このままだとゲームとして危ない」「すぐに飽きられる」なんて言われていて、中期的なゴールとか、ビジネスとして考えたらそりゃあ大切だけど、そうじゃなくて、いつも歩いてる道にポケモンがいて、普段聞き流してる雑踏の中で「あっ、ミニリュウがいる!」とか聞こえてきたらマジかよって沢山のひとがスマートフォン取り出してわいわいしてる、そういう昔に夢見た世界が実現したことが本当に嬉しい。今までゲームを好きなまま生きててよかった。
 
 というわけでとっても楽しんでいます、ポケモンGO。どこかの誰かの言うように今後ユーザーが減っていくのかもしれないけれど、この素敵な体験は自分の心にしっかり刻まれているし、今後もポケモンを求めて少し遠くまでランニングしてみたり出かけたりすると思う。今はただ、ポケモンが日常と地続きになったということが、とっても楽しいんです。これからのアップデート、楽しみにしています。

 おしまい