今日も歌があるから

Tiamat / T'apo Eagh / ScreenShots : http://www.flickr.com/photos/100497787@N06/

劇場版「若おかみは小学生!」を見てきました

 週末に若おかみは小学生を見てきました。もともとテレビシリーズを見ていて面白かったので劇場も、と思いまして。テレビシリーズの「若おかみ~」は最初は見る予定がなかったのですが、「歌のワイドショー 音楽の森」で、色々と「言わされてる感」のあった小林星蘭ちゃんさんが主役ということで、ロボカーポリー的な意味でネタにはなるかなーと思って視聴したら思ったよりずっと面白いぞ、ということでハマってしまいました。調べてみると原作は20巻まで出てる長編作品でとりわけ小学生に人気のようで、自分が子供の頃のマガークとか、ひなた丸にあたるのでしょうかね。
 というわけで、作品の中身を思い出しながら、感想を書いていこうと思います。
 ここから先はネタバレを含みますので、見たくないかたは回れ右でどうぞ。
 
 
 劇場版はテレビシリーズ版とは違う形で物語の最初の部分から描かれていきます。主人公のおっこは家族旅行中に両親を事故で亡くしてしまいますが、テレビではあっさりと描かれていたように思います。劇場版では事故の様子が詳細に描かれるのですが、とても怖いシーンでした。運転免許持っていると分かりますが、対向車が急にこっち向かってきたときのあの恐怖は筆舌しがたいですね・・・。こうして両親は命を落としてしまい、おっこだけが助かります。
 一人だけ助かったおっこは東京?の自宅を後にし、祖母の旅館『春の屋』に住むことになります。この時映る駅や温泉街の街並みがとても素敵でした。有馬温泉が舞台らしいですね。

news.arukikata.co.jp


 春の屋についてから、結構なスピード感で時間が過ぎていきます。四季折々の景色が見れて大変楽しいですが、すこし戸惑いました。おっこは旅館の仕事を通じて沢山のひとと出会い、子供ながらにお客さんや、自分の出来事について葛藤します。しかし、おっこを取り巻く人たちがとても優しい。旅館が舞台の作品だと『花咲くいろは』なんかを思い出すのですが、クセの強い人たちが多く、序盤は少し嫌な気持ちで見ていたので、いい人に囲まれている今作は安心して見れました。(『花咲くいろは』も後半に連れてグイグイ面白くなっていく素晴らしい作品ですが。)

 唯一おっこに突っかかってくるのはピンフリ(ピンクのフリフリ)こと秋野真月ちゃん。水樹奈々さんが演じていらっしゃいますが、この子はもう水樹さん以外は考えられないくらいバッチリな役どころでした。とても優秀で周りにも厳しい子ですが、根は真面目で努力家な子。少し抜けているおっこと何かと衝突しますが、その言葉は花の湯温泉を愛しているからこそ。いいこと言うなあ、なんて思いながら見ていました。
 
 おっこが旅館の仕事をこなしていく中で時折、お父さんとお母さんが登場します。まるで事故なんか無かったかのように普通に出てきて振る舞う二人を見て、おっこだけでなく、私も困惑しました。そして、自分の中で一つの疑問が産まれます。「もしかしておっこは事故のショックで意識を失ったままで、この出来事は全部夢なんじゃないか・・・?」「だから幽霊が見えたりするのかな・・・?」と。
 
 モヤモヤした気持ちのまま話は進んでいきますが、途中でおっこに事故を思い出させる出来事が起きます。ここのおっこの一連の動作が凄くリアルで、キツい。ウリ坊とミヨちゃんがいてくれてよかった。この後、強引に小林星蘭ちゃんさんの歌が流れてフフッてなれた。
 
 辛いイベントから秋がきて冬に。この間にも挿しこまれるお父さん、お母さんのエピソードやスズキくんの「別れの時」というセリフに「やっぱこれ意識戻って全部夢だったエンディングでしょ」と確信。最後はめっちゃ感動するやつじゃーん、とかほくそえみながら見ておりました。めっちゃ的外れでしたけど。

 
 冬のある日、1組の家族が春の屋を訪れます。お客さんの要望に応えるために直前に大ゲンカしたピンフリに謝罪をして助言を求めるおっこ。お礼を言われて耳たぶ触りまくる真月ちゃん。めっちゃニヤニヤしたわ。めでたくお客さんの要望に応えたと思いきや、お客さんから語られる衝撃的な話。実はこのお客さん一家のお父さんは、おっこの両親を死なせてしまった事故の当事者だったのでした。
 この話が語られていく過程で自分の予想が全く的外れて、両親の死は事実だったことが分かってしまったとき、おっこもまた両親の死が間違いでなかったことを突き付けられていて、おっこが嗚咽するところは思わず目が細くなってしまって。分かっていても助けてあげられないウリ坊とミヨちゃんと、視聴者の我々。彼女の今までの人生の中で一番つらい時間を、見ていることしかできないのですね。
 
 その後、責任を感じて宿を変えようとする家族に対しておっこが言ったセリフは、おっこがお客さんのためにやってきたことでもあり、おっこが花の湯温泉に来て、皆にしてもらってことでもあったのだと思います。

 『花の湯温泉のお湯は、誰も拒まない、すべてを受け入れて癒してくれる』


 そしてちょっと忘れかけていたウリ坊、ミヨちゃんとの別れは哀しくも寂しくもなくて、超ハッピーで。もうこの時にはおっこは二人の姿が見えなかったかもしれないけれど、神楽舞を踊る4人はまるで互いが見えているかのように、幸せそうに踊るのでした。
 
 エンディングも素晴らしかったです。作中のワンシーンが手書きで流れてくるのですが、どれもこれもいい味出していて。ポストカードになって売っていたので後で購入しました。エンディング曲の『また明日』も若おかみらしい、よいテンポで、噛みしめるようにスタッフロールを眺めていました。
 
www.youtube.com
 

 児童向けの作品ながら重めのテーマを含んでいる今作ですが、はぐらかすことなくしっかりと伝えてくれる作品だったと思います。惜しくもテレビ版は劇場公開と同時に幕を閉じてしまったのですが、反響次第では続編があるかも、ということなので、今後の展開に期待したいところです。
 
 おしまい