今日も歌があるから

Tiamat / T'apo Eagh / ScreenShots : http://www.flickr.com/photos/100497787@N06/

春ゆきてレトロチカを遊びましたので

春ゆきてレトロチカを遊んだ。
いいところも悪いところもあったけれど中々面白かったのでプレイしての所感を書き留めておく。

 本作はミステリーをベースにしたアドベンチャー作品で、主人公であるミステリー作家、河々見はるかが訪れた四十間家で起きる事件を持ち前の推理力で解き明かしていくゲームとなっている。基本的にはストーリーを追う中でちりばめられた証拠を基に仮説を立てて推理し、謎を解き明かしていく作りになっている。また、メインストーリーを解決する過程でいくつかの出来事を行き来することがあり、そこで得た手がかりが物語の核心へとつながっていく。
 
■よかったところ
 まずはプレイ環境。私はPS5でプレイしたが、色彩豊かな自然や情緒ある家屋に加えてレトロな雰囲気がPS5の映像美で存分に映し出されていてとても素晴らしかった。もしPS5をお持ちであれば是非PS5でプレイしていただきたい。加えて、音楽はハイキュー!(アニメ)の劇伴を担当されている林ゆうきさんで、物語をしっかりと盛り上げてくれる。登場人物たちの心情を細やかに表現してくれており、プレイヤーの私たちも力が入ってしまう。サウンドトラックも出るようなので楽しみ。

 
 2つめは登場人物の人数。本作はメインストーリーとは別に過去の出来事を追体験するお話がある。この時、過去に出てくる人物たちは主人公が現代で出会った人たちが扮した姿で登場するため、登場人物は多いが、出てくる顔は少ない。例えば現代では主人公の同行人だった女性が過去の出来事では花形スターであったりする。役者としての手腕を存分に発揮してくれるこの設定が非常に面白く、場面によって見た目も性格も変わる登場人物を見るのが楽しかった。この登場人物たちは「過去の出来事として」悪事を働いたり横暴なふるまいをしたりするので、現代に戻ってきた時に些細な行動が怪しく見えてしまう。結果的に終盤まで真犯人が分かりづらく、それぞれの言動が過去の出来事に引きずられて混乱してしまうのが面白かった。
 
 3つ目は推理パートでの回想システム。推理パートではストーリーを進めて拾い集めた証拠をパズルのように当てはめて仮説を立てるシステムになっているが、ヒントを拾った場所を簡単に見返すことができる。その際に画面上にヒントが浮かび上がるため、ヒントの意図が掴みやすく推理を立てやすかった。この時流れる映像も簡単にスキップしたり早送りできるので、重要なポイントを何度も見返すことができるのはとてもよかった。
 
■よくなかったところ
 1つ目は推理パートのシステム。推理パートは俯瞰視点で進めていくが、角度が浅くて全体的に見づらい。仮説を当てはめる場所は決まっており、パズルの模様を見て簡単に進められるようになっているが、テキストが浮かび上がったりして模様が見えづらく、角度が浅すぎてはめるのに苦労したりする。ゲームと全然関係ないところで苦労させられるのはやめてほしかった。
 
 2つ目は中盤のシナリオ。急にバイオハザードみたいな謎解きが始まる。しかも一捻りあってめんどい。後半の謎解きは多少意味があったと思うが、前半の道具を探したり番号見つけたりするシナリオはなんで用意されたのかよく分からなかった。
 
 3つ目は設定の弱さ。様々な背景を持ったキャラクターが登場し、推理にも大きく影響を与える要素を持つにも関わらず、そうなった根拠や理由の描写があまり描かれないので消化不良になってしまうことが何度かあった。折角謎めいていていいキャラなのに中途半端な理由で行動していたりするのも残念だったので、もう少ししっかりした理由付けや根拠の描写が欲しかった。
 
■めっちゃよかったところ
 彗星のごとく現れる梶裕貴
 クセが強すぎて出てきた瞬間ニヤニヤしてしまった。卑怯だ。
 
 アドベンチャーゲームとしてものすごく新しいことをしている訳ではないものの、美しい映像や音楽と表情豊かな登場人物たちの演技は上質なサスペンスドラマを見ているようで楽しく遊ぶことができた。惜しい部分はいくつかあったが、それもサスペンスドラマだと思うと多少は許せてくる。レトロモダンなテイストで次回作があるのであれば、期待したい。